厚生年金保険料はこれから上がるのか③
今後の年金制度の動向を占ううえで重要な財政検証が公表されました。その内容を簡単にご紹介します。
財政検証とは
5年ごとに行われる最新の人口の将来推計などを踏まえ、現在の年金制度を前提にした場合、将来の年金財政がどのような姿になるかを検証するものです。
2019年財政検証
財政検証で見るべきところ
●今後100年間において、所得代替率が50%を維持できるか
経済成長や労働参加の程度に大きく左右されるということで、大きく①から③の3つのケースを想定しています。
①経済成長や労働参加が高い水準で進む
所得代替率は50%以上を維持できる
②経済成長や労働参加がある程度の水準で進む
2040年代半ばには所得代替率は50%に達し、その後もマクロ経済スライドを続けると所得代替率は40%台半ばにまで低下する。
③経済成長や労働参加が進まない
2052年度には国民年金の積立金が枯渇して完全賦課方式に移行することになり、その場合の所得代替率は36~38%程度にまで低下することになる。
こういう結果のようです。前提が広すぎて答えになっていないような気もしますよね^ ^
モデル世帯
所得代替率の計算は、夫婦二人世帯を想定しています。夫だけが働いて厚生年金を受け取るとし、妻は専業主婦という世帯が想定されています。
このようなモデル世帯は、税制においては、よく使われるモデル世帯ですよね。
現状として、共働き世帯1200万世帯、専業主婦世帯600万世帯という調査結果ですから、約2倍も共働き世帯が多いことになります。
専業主婦世帯は「典型的な世帯像」とは言えなくなっているため、将来の高齢者世帯のごく一部しか見ていないことになります。これで年金のあり方を考えて良いのかという問題があります。
50%維持が困難な場合
もし50%を維持出来ない場合には、法律で「給付及び費用負担の在り方について検討を行い、所要の措置を講ずるもの」とされています。
つまり、年金制度を大幅に改正すると言うことです。保険料率を引き上げるのか、賦課方式をやめるのか、いずれにしても我々にとって良いことではありませんね。
良かった点として、財政検証を見ると、5年前と比べ就労人口が増えていることもあり、被保険者が増加していることから、所得代替率や受給できる年金額が少しばかり改善しています。素直に喜ばしいことですね^ ^
まとめ
将来の年金制度を検証する「財政検証」の紹介でした。前回と比べ若干改善の兆しが現れてきました。
これは、この数年間の出生率の向上や女性・高齢者の就労拡大による被保険者数の増加が要因です。
ただし、3つのパターンで予測しているとおり、どれに転んでもおかしくない状況です。したがって将来は安泰というわけではないことは留意が必要です。
次回、財政検証について、少しだけ深掘りして説明します。